
筒井ともみさんの食べる女。短編小説が色々詰まっている本なのですが、どの話にも美味しそうな食事や食べ物の描写が出て来て、お腹が空いてしまいます。基本的には食べる事や食材を通した男女関係、恋愛模様を描いている訳なのですが、単なる恋愛小説ではなく登場する食べ物にもきちんとストーリー上の役割を与えられている事がとても興味深いです。
私が好きな話は、闖入者。最初はなんとも思っていなかった冴えない男性の作ってくれる料理があまりにも美味しすぎて、じょじょに心を開いていくもの。その男性が作ってくれる料理がとても美味しそうなんです。
タチウオのムニエル、クレソンとラディッシュと山ウドのサラダ、カツオのタタキ、アイナメのしゃぶしゃぶ。そのどれもが旬の素材を使ってとても丁寧に作られた料理ばかりなんですよね。
私もそういう料理、作れるようになりたいなあと思います。
もうひとつ、好きな話は、愛のホワイトスープ。妻の作ってくれる添加物の少ない正しい食事、愛人と一緒に酒を飲みながら食べるコンビニのジャンクフード、そして自分で作る添加物いっぱいの白く濁ったスープ。
妻と愛人、体に良い食事と悪い食事、そのどちらもいいとこどりしたい男の心情を女性と食事に反映させた面白いストーリーです。体に悪いとわかっていても食べたくなってしまう気持ち、わからなくもありません。
![]() 食べる女 [ 筒井ともみ ] |
![]() 食べる女(続) [ 筒井ともみ ] |
